ダマスカスソード
ダマスカスソードは多くのゲームに登場しています。その元となったものは実在する刀剣で、多くは中世中東に存在していました。
名前の由来
中世の時代、ヨーロッパの十字軍が遠征時に中東・西アジアにあるシリアの首都、ダマスカス(Damascus)地方で入手されたため、ダマスカスソードという名前が付けられています。主な素材は鋼(鉄に微量の炭素)からできており、古代インドで開発されたるつぼ鋼(Crucible steel)であるウーツ鋼(Wootz steel)が使用され、ナイフから柱まで同素材で作られていました。ウーツ鋼自体はインド地方で製造されており、特にシリアで刀剣等に加工されていたものをダマスカス鋼と呼ばれています。
逆に私はダマスカスと聞くと剣を想像するほどにゲーム脳に侵されております。
特徴
ダマスカス鋼の特徴は何といっても錆びない、綺麗な模様があること。この錆びない特徴は素材中の微量炭素、バナジウムやその他希土類が影響していると考えられています。これにより鋼の内部にカーボンナノチューブが形成され、錆びないのだそうです。錬鉄にすると錆びないのと同じ原理なのでしょうか…?(すでに錆びている黒錆と違うと思われますが、調べていると黒錆はマグネタイトと呼ばれるそうで、某魔獣が大好きなやつですね。)
また、綺麗な模様は内部構造を現しており、溶けた素材の鋼がるつぼでゆっくり凝固するときに、最初に炭素濃度の低い高融点の鋼が凝固し、炭素を多く含む低融点の鋼が間を埋めることで模様が出来ます。これは日本刀の刃文と同じ原理ではありますが、日本刀は刀身の刃と棟の間に綺麗な波状を境にしているのに対し(刀身に泥を塗り、焼き入れを行うため)、ダマスカスソードは刀身全体に年輪状に形成されています。日本刀は刀匠によってこの刃文の出し方とかが技術なので、製法を明らかにしていないようです。

Science Museum in London
Exhibition Rd, South Kensington, London SW7 2DD

歴史的価値
当然、錆びない綺麗(当時の西洋剣と比較し)よく斬れる刀剣は当時十字軍の中でも人気があったようです。強度的な意味合いでそれほど長い剣は作れなかったようですが、それでも小太刀・脇差程度の長さはあります。英国がインドを属国としたころ、ウーツ鋼で作られていた刃物や鉄砲は他の素材から作られたものより優れていたことから、興味を持った英国人が買い集めて研究を依頼しました。戦争の主武器が刀剣から銃火器に移っており、安価大量生産の鉄に押された、ダマスカス鋼に必要とされている不純物のバナジウムが枯渇したとかいろいろ原因はあるようですが、すでに製造はされていなかった(下火になっていた?)ようです。この辺りの時代の前後考察や情報はわかりません。ただし、現代においてダマスカス鋼の製法は正確には伝わっておらず、るつぼ鋼であること以外はすべて発掘や現存するもの、るつぼ鋼の文献などから各国で研究されました。英国に持ち帰った数が多く、研究がされた結果、その研究成果は現在のステンレス鋼の礎となっています。ただし、ステンレス鋼は合金(複数の金属を合わせたもの)であり、ダマスカス鋼は単なる鋼である違いがあります。
現在のダマスカス系の刃物
ダマスカス包丁とかナイフとか綺麗ですよね。でもディスるわけではありませんが、古代のダマスカスソードとは違う製法で作られているものです。いわゆるレプリカってやつです。製法としては異種の金属を積層し鍛造することで、ウーツ鋼を鍛造した時に現れるものと似た縞模様を表面に浮かび上がらせたものになります。日本刀の刃文は積層したものなのか、焼き入れ時のものなのか、色々あるようです。また、チェーンやワイヤーなどをインゴッドにし、そこから意図的に任意の模様を出す手法もあるようです。鍛冶系のYouTubeとかだと結構やってますよね。
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